出雲路講座「奥出雲に息づくたたら製鉄~千年の技と精神」

学校の教科書を閉じてから、郷里では歴史的に驚くような大きな変化があった。
荒神谷遺跡から銅剣銅鐸が見つかった時は、丁度帰省をしていた時だったので、
すぐ近くにあるからとまだ足場の悪い青いビニールシートと大学のテントの張られた現場を見に行き、
こんなことに遭遇するなんて!と胸が躍った。
出雲大社でみつかったばかりの大柱を観に行ったと親戚の人たちから聞いた時は目が回るようであった。
こどものとき身近には理解を超えるミステリアスな伝え話がたくさんあったが
、しつこく聞いても大人は納得のいく説明をしてくれなかった。
新幹線が通らない小さな町に興味を持てなかったが、近年故郷がとてもおもしろくなった。
知らない事がなんてたくさんありすぎるだろう。
それらは魅惑的でひとつずつひも解くうち先人の歴史を知りその延長線に自分があると判る。
今それらを示してくれる人たちに感謝する。

出雲路講座11月は、日本美術刀剣保存会村下(むらげ)木原明さん講師による「
奥出雲に息づくたたら製鉄~千年の技と精神」。
それではまずと、厳粛な儀式の様子を収めたビデオ『匠と至芸の世界 
極める「玉鋼たたら吹き」』をみることから始まった。
奈良岡朋子さんのナレータによる。
講座の受講者は一斉に身を乗り出した。

80歳を越えられた安部由蔵さんと、50歳台の木原明さん二人が村下を務める。
先人が1000余年かけて伝えてきた厳粛な儀式は、建物の中での炉の設計からはじまった。
炉床(床釣り)をたずねるように叩くたび、答えるように炎が火花があがる。
炉作り(釜ぬり)は、すでに土の中から熱が湯気のように上がる中、素手で土が盛られ積み上げられていく。
炉の設計は底辺15センチの床から始まり積み上げられ、1m25、2m70、95cmの箱になる。
底の腹には火と炎の変化を読み取る40本の空気穴が開けられる、
ここまでも昔描かれた絵の中の様と同じである。
さあ、というところで木原さんが呼びかける。
「やってぇごしなさぁい~」
この掛け声の言葉に反応したのは出雲弁がわかる郷里の方たちだった。
三日三晩絶やさず、蹉跌をふくんだ土と炭がくべられていく。
燃え盛る火の温度を、色、音からよみとり作業は黙々と続けられていく。
こうして1時間に7mmのケラが成長していく。
職人さんの仕草はうつくしい。
シャベルを持つ手、シンプルな道具で操作を制御する様は、無駄な動きのない「舞」をみるようであった。
生き物のような巨大な炎は容れ物を押し開く勢いだ。
高齢の安部さんが炉の底にかがんで、土が溶けて大きくなった空気穴の補修をする。

たたら吹きの重要な要素は「土、火、村下」。
私が数年前NHKのプロジェクトⅩでみたのは、木原村下が[成る]ところだった。
画面の中の若い木原さんが、今70歳代になられマイクを持ち技術と伝承を語られている。
「安部由蔵村下のしごと」 1、仕事が好き(身に着きよい仕事ができる)
                2、親方に可愛がられる、(真心を込めて取り組む)
                3、認め目をかける(心が通い)
として教えがあげられていた。
正常操業というのは[腹八部]、空腹も食べすぎもよくないのである。
人が操るこその含蓄のある著わしである。
1000年続く炎の息づかいを確かめながら人の目が進めていく、
形を変えながら成形していく技術からこうして純度の高い産物ができるのは、
大学教授の研究が重ねられ調査によってもいまだミステリアスだそうだ。
中国山地にある良質な真砂砂鉄源、30~40年のサイクルで雑木は柔らかな炭になる、
1500ヘクタールの水田が横田町に広がっている。
ヤマタノオロチ伝説の舞台は、奥出雲町船通山ふもとあたり「須佐之男命が降り立ったと伝わる鳥髪の地」で、
日刀保(日本美術刀剣保存会)たたらもここにある。
ヤマタノオロチの赤い鬼灯(ほおずき)のような目は真っ赤に燃えるたたらの炉を、
ひとつの胴体に8つの頭と8本尾が生えているのは砂鉄を採取する川が多くの支流に分かれる様子を、
腹が血でただれているのは鉄分で赤く染まった川を、それぞれ描写しているーとする。
斐伊川は「肥の河」とされ、ほとりを歩くと酸化した鉄分で河のあちこちが赤く染まっている。
同じ話を何度聞いてもワクワクする。

炉の解体がはじまる。
初ノロが掻きだされ、やがて砂鉄10トン木炭2トンをくべた砂鉄がし焦れる音をたてて、
2,5トンのケラが産声をあげる。ほっと息をつく。

こうして生み出された質的に優れたものに[玉鋼]という美称がつけられ、日本刀剣の素材になっている。
安来にある和鋼博物館はアールデコ調の外観が美しい建物で、日立金属安来工場に隣接している。
近くに積出港として栄えた安来港と伝説のある十神山がある。
夏安来に滞在した時、建物の横をドライブで通るたび「今度案内しますよ」と義弟がいってくれた。
物知りな彼のガイドはおもしろく、次回の楽しみのひとつになった。
妹から、「ヤスキハガネ」のペーパーナイフをもらい愛用している。
切れ味がシャープで気持ちいい。
火を焚く⇒土をしめる、このフレーズは陶芸の門の前に立った私にはしびれる言葉だった。

作詞作曲不詳/文部省唱歌 『村の鍛冶屋』は
  
 「♪しばしも休まず 槌うつ響き。
   飛び散る火花よ 走る湯玉。
   鞴(ふいご)の風さえ 息をもつがず
   仕事に精出す 村の鍛冶屋♪」

という歌詞であった。
例によって、私は唱歌の歌詞を不明瞭に記憶していた。
「しばし」を、「火箸」と思い込んでいた。
前後の文脈無視である。
「?」と思ったとしても確かめる意向も持たずに50年以上を経ていたとは。
育った町に鍛冶屋さんがあって、職人さんの仕事を見た記憶がある。
こどもごころにその作業に感銘をうけたことを今でも覚えている。
ものづくりの真剣な息づかいが感じられる黒光りするこの燭台は、安来市広瀬町の鍛冶屋さんの作品.

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この記事へのコメント

金型マン
2014年07月05日 19:17
 そこで開発されたSLD-MAGICっていう工具鋼、熱間鍛造用のパンチに使っているが、黒光りをしてものすごく持ちがいい。素晴らしい材料ですね。

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